竜の系譜 ~プロローグ~

あなたにとって、モンスタハンターはどんな世界ですか?

 

おはようございます。

永い間、モンスターハンターの世界に、あたしの分身が、へたれハンターとしてで

すが身を置いてきて、いつも思っていた事、思っていること、それは

  モンスタハンターの世界ってどんななんだろう?

  どんな世界なんだろう?

という疑問、と言うよりは興味です。

 カプコンさんからは、モンスタハンターの世界観についての公式なコメントはな

いと認識しているのですが、興味を持たれる方々が、各シリーズに散見される、都

市や街、村、フィールド等々に関する断片的な情報を集積させ、そして何よりも想

像を逞しくさせて、人それぞれの様々なモンスターハンターワールドを築き、ウィ

キペディアでは、ひとつの統一された見解として、モンスターハンターワールドマ

ップ的な物も現在進行形で構築されています。

 例えば、指輪物語や、風の谷のナウシカ等に代表されるファンタジーでは、その

多くが作者自身、或いは関係者、関係機関によって、その作品の世界観、地図(略

図であったりはしますが)を発表しているので、そこに、読者の想像が割り込む余

地はありません。

 しかし、モンスターハンターにはそれがない。

 個々のプレーヤーが好きに想像し、プレーヤー毎の世界観が存在することを許さ

れる・・・モンスタハンターは、イマジネーションフリーな世界なのだとあたしは

思っています。

  

 あたしのモンスターハンターの世界観は? 

 

 

プロローグ

 ポッケ村からドンドルマへ向かっていた隊商が、1頭の竜に襲われたという話は

間もなくドンドルマに所在する龍歴院の本部に、至急報としてもたらされた。

 「積み荷は、積み荷は無事なのか?」

 長老のアナンダが、長官室に駆け込んで来るなり大声を上げた。

 長官席にすわってぶ厚い本に見入っていた、龍歴院長官のサラシナは、ユクモ村

出身の元ハンターらしく、ユクモ団子と呼ばれるハンター編みで結わえ上げた、長

い栗色の髪の毛の丸めた部分に手を添え、小首をかしげて顔を上げると、入ってき

たアナンダをじっと見つめた。

 「アナンダ様は、人の命よりも積み荷の方が心配なのですか?」

 「いや、そんなことはない。ただ・・・その、中身が中身だけにな・・・フム、

 隊員達は無事なのか?」

 ばつの悪そうな表情でアナンダが尋ね直した。

 サラシナは「フフッ」と微笑むと、立ち上がって、はるか白山(ビャクゼン)

の険しくも白銀に光輝く姿を一望できる窓辺に近づいた。

 「御心配は要りません。隊も積み荷も無事にノーダラに到着したと連絡が入って

 おります。」

 「おお!さようか。積み荷は・・・いや隊員は無事じゃったか。」

 手を叩いてうなずきながら、アナンダは、ほっとした表情で窓辺に近づいた。

 「ただ・・・。」

 「ん?ただなんじゃ?」

 「はい、竜は逃げて行ったそうです。何もせずに、いえ、何も出来ずに。」

 「何?何も出来ずに逃げ出した?どういうことじゃ?」

 アナンダは、窓際のソファーにどかっと腰を降ろすと尋ねた。

 サラシナは、目を細めて白山を見つめたまま、独り言のように答えた。

 「隊の護衛を担当したカシュガルが、今までに見たこともない竜だったと言って

 いるのです。」

 「ほほー、カシュガルと言えば、元討伐隊対飛竜のスペシャリストではないか!

 そ奴が見たことがない竜、と言うのはいったい・・・」

 「たぶん。」

 そう言うと、サラシナは一旦言葉を切って、先程まで見ていた分厚い本を手に取

り、開いているページをアナンダに見せた。

 龍の系譜と題されたその本の中身は、ギルド所属の歴戦のハンター達が、闘った

過去から現在に至るまでの膨大な記録は基より、世界中を縦横無尽に行き交う隊商

や旅人等が遭遇した記録をベースに、或いは神話や寓話として太古より語り継がれ

てきた伝説等の、いわゆる憶測、推測など、フィクション的要素も敢えて否定せず

この世に存在する或いは存在するであろう、又は存在するかもしれない竜の全てを

網羅してそれぞれの個体を系統立て説明するといった内容だった。

 「彼の見た、隊を襲った竜とは、たぶんこれではないかと思うのです。」

 開かれたページに見入るアナンダの目がみるみる険しくなっていく。

 しばらく沈黙が続いたあと、アナンダは険しい声でつぶやいた。

 「クシャルダオラ・・・まさか・・・。」

 サラシナはゆっくりとうなずいた。

 「全身に風をまとっていたとカシュガルは言っています。そんな竜、こいつしか

 見当たらない。積み荷の内容が内容なだけに、それを狙う輩がいるであろう事は

 十分予想出来、だからこそ、カシュガルをリーダーに、6人ものハンター達に護

 衛を担当させたのです。でも、襲ったのは竜で、しかもそれが・・・まさか古竜

 が現れるなんて・・・」

 「ふむ・・・たまたまのことかもしれんがな・・・それよりも。」

 アナンダはクシャルダオラの脅威について記された部分を見つめながら続けた。

 「ここにも書いてあるとおり、クシャルダオラは、神話級の古竜ではあるが信憑

 性の高い遭遇記録も残っており、史実として、災難級レベルの非常に危険な竜と

 して実在するものとわしは認識しておる。」

 アナンダは本から目を反らし、どうにも納得がいかないといった面持ちでそのあ

 とを続けた。

 「そんな危険極まりない竜がだ・・・積み荷を襲う目的で現れたと言うのも深刻

 な話だが、それよりも、隊商も積み荷も無事だと言う・・・その竜がクシャルダ

 オラだったのならなおさらだ・・・災難級にランクされるほどの危険極まりない

 竜が、何も出来ずに逃げ出したと言うのは、いったい全体どういうことなのだ

 ・・・何が起こったのだ・・・現地で。」

 それにはサラシナも、わたしだって信じられないと言った表情で答えた。

 「アナンダ様。確かにクシャルダオラが現れたって事も驚きですが、その竜が逃

 げ出した理由に、実はわたしも一番驚いているのです。」

 席にもどるとサラシナは目を閉じ、首を横に振りながら、噛み締めるようにあと

 を続けた。

 「カシュガルは、ハンターが現れて追い払ったというのです。」

 「なに?ハンターが?」

 「はい。しかも一人で・・・彼女は、クシャルダオラの前に弓を持って立ちはだ

 かると、すざまじい勢いで竜の回りを走り回りながら次々に矢を射て、竜がまと

 っていた風を散りじりに飛散させ、最後に竜の眉間めがけて複数の矢を同時に放

 ったそうです。結局、その矢が放たれる寸前に、負けを悟ったクシャルダオラ

 飛び去った・・・・と言うのです。」

  「彼女だと?・・・そのハンターは女なのか。」

 「そうです。しかも耳の尖った・・・彼女は竜人族だったというのです。」

       

                   竜の系譜 プロローグ 完

 

 あたしなりのモンスターハンターの世界を、小説にしようと思います!

 永年の夢だったんです!

 さて、どうなることやら・・・

 不定期ですが、XXの活動記録の合間合間に連載させていただきます。

 お楽しみに~^^